2021-11-26 想い出の散歩(2) 思い出の散歩 僕は、門の方に向かって歩き出した。建物を取り囲む木々の色付きを見ようと思って。「ここの紅葉も見納めですね。」と言ったかどうかは覚えていないが、彼も自然な動作で同じ方向に向かって歩き出した。僕たちは建物を囲む小路を、肩を並べて、しかし触れ合わせることはなく、歩き出した。途中で、雑木林の方に続く余り人が通っていない草だらけの横道があり、「こっち行ってみよう、」と彼は言った。他の誰の目も届かない、林の中を僕たちは歩いていった。