薄暗がりの中で、二人の時が始まる。
唇と唇が触れ合い、やがて舌が絡み合う。
肌と肌が触れ合う。
指先が柔らかく体をなぞり、言葉にならない声が時折低く響く。
唇もまた、互いの体を這い、喜びに体を震わせる。
やがて途切れるとも知らず、時間が瞬く間に過ぎてゆく。
闇の中では分からない、銀色の髪の人は、
沢山の抱擁の後で、小さな眠りに落ちた様だった。
僕は、その体を抱いているだけで満足だった。
そして、その銀色の髪に手を触れ、撫でながら、
寝息を立てている唇にキスをした。
相手の体温を感じながら、僕は思った。
予定をキャンセルしようと思ったけど、
やっぱり行かなきゃ。
また遭う機会が来るのかどうか分からないけど、
さよなら。
吸い返さない唇に唇を重ねながら、僕は暗がりを出る。
心残りだけど、覚めなきゃならない夢もある。
本当は、もう少し居たいけど。