もう、夜の気配。
10月も半ば過ぎだもんね。
まだまだコートにゃ早いけど、
冬の足音が聞こえる。
薄暗がりの中に、悲しさと
わびしさとを混ぜ合わせた
においがする。
人駅ずつ止まりながら、ゆっくりと電車が
行くように、時は過ぎていく。
でも、止まることはせずに。
壁に沿って立ち、見えない目を開いて
空を見上げる。
それは、いつの光だったのか?
かつて見た夕焼けにも似た赤い光が、
わずかにその空を、その色に染めている。
おいらに何かを話し掛けながら。